薪づくり

自然乾燥での良質な薪の作り方

 

良質な薪

 

良い薪の条件は大きく分ければ二つ

・乾燥状態の良い薪
・虫喰いの少ない薪

以上の薪を作るために日々私が心がけていることと、実践していることを紹介したいと思います。

 

 

乾燥状態の良い薪

 

 

長さが不揃いの薪に強いスイス積み

 

 

薪を作るにあたって最も大事なことが、薪の乾燥です。

どんな薪でもしっかり乾燥していなければ、本来の力を発揮できません

乾燥状態が良いと、火持ちが良く火力が安定し、長時間にわたって部屋を暖める事ができます。また、煙は水分の表れなので、含水率が少なければ煙の量も少なくなります。近年の薪ストーブは薪の燃焼効率が良いので、煙や灰の量が少ないですが、昔ながらの1次燃焼式ストーブの場合、薪の水分が多いとモクモクと煙突から煙を排出します。

では、薪の含水率はどのくらいを目安にしたら良いのでしょうか。

一般的には20%以下と言われています。また、質の良さを求めれば15%以下とも考える方もいらっしゃいます。

この20%を達成するのはあまり大変ではありません。薪作りの知識のない方でも原木を切り、玉を割り、重ねておけば1年〜2年で20%になっているはずです。

しかし、私が目指すのは15%以下なのです。

 

まず、木は切り倒した瞬間から乾燥を始めます。しかし、切ったばかりの木の含水率は40%以上もあるのです。薪の含水率を測定する機器ではほとんどのメーカーの場合40%までしか表示されないので、実際の所どのくらいの水分を蓄えているのか検討も付きません。

そのため、できる限り、木の水分が少ない季節に伐採したいのです。
そうです、木には水分の少ない季節があります。それがなのです。

春に芽吹き、夏には緑が生い茂り、秋になると葉は枯れ始め、冬には冬眠するのです。この冬眠を始めた12月から2月の間に伐採します。
本来ならば50%はあるんじゃないかという木の含水率も、冬にはその数値をグッと下げます。
したがって、夏と冬では薪を作る時の含水率のスタートが全く異なるのです。
より早い時間で15%を目指せるということになります。

 

一般的には、薪の乾燥には1年〜2年はかかると言いますが、この年数は誰でも達成できる基準値と私は考えています。

作り方によっては半年で20%を達成する事ができ、1年で15%を達成することができるのです。
しかし、

・冬に作る
・風通しがいい
・陽当たりがいい

ことが絶対条件となります。

木は切った瞬間から、割った瞬間から乾燥を始めます。
そして、湿度の影響を強く受けます。夏に作ると乾燥しにくいのはそのせいです。一見、夏は日差しが強く、乾きやすいと思いがちですが、日本の気候では夏はじめじめしており、風もあまり吹きません
夏は雨も多いです。多少の雨ならば問題ないのですが、毎日降るような場合、薪に多大な影響を及ぼしてしまうのです。黒くなり、見た目が悪くなるだけではなく、カビやキノコが生えます。キノコは薪の栄養分を吸い取り、質量をも削っていきます。
その薪は非常に軽く、まるでスポンジのように弱々しくなってしまうのです。

以上のような状態を避けるために極力、冬に薪作りをします。
まず、冬に割った薪は次の日には木口にヒビが入っています。乾燥の出だしが非常に早いです。しかし、冬でも注意しなければいけないのが、薪を乾燥させる場所です。第一に風通しの良い場所を選びましょう。その次に陽当たりです。

割ったらすぐに屋根付きの薪棚に入れるという事は避けたほうが良いでしょう。

薪棚のある場所が、風通しが良く、陽当たり良好であれば問題ないですが、そうでない場合はすぐに薪棚に入れない方がいいです。屋根付きの薪棚があるのであれば、乾いた薪の保管場所と考えた方が理にかなっております。薪というのは風が大好きなんです。風にあたるのが気持ちいいのです。冬は比較的雨も少ないので、屋根をかけることより風を全体に浴びせましょう。薪は喜び、カチコチに固くなっていきます。上手く乾燥していく表れです。

それでも雨や雪が気になるのであればビニールシートをパサっとかけるだけでも大丈夫です。

 

風通しの良い場所にて乾燥

 

なお、画像のように、地面から最低でも100mmは高さを取ります。私がいつも作るのは、テストピースの基礎に角材を乗せた土台です。テストピースは生コン屋で無料でもらうことができ、角材は解体で出た廃材です。

 

このように乾燥させたら、梅雨前には屋根をかけます。毎日のように降り続ける雨から薪を守るためです。屋根をかける頃には薪もだいぶ乾燥し、固くなり、横殴りの雨に撃たれても平気です。上からの雨だけは攻略します。

 

そして冬になり、湿度が下がります。針葉樹の場合はもう焚けるくらいの含水率になっています。広葉樹のように質量の多い薪の場合は薪棚(我が家ではビニールハウス)に移動しさらに乾燥させます。そして一年が経った頃には含水率が15%になっています

 

薪作りの時期と、環境さえ整えば1年で良質な薪ができるのです。

 

乾燥が終わったら濡らさず保管

 

 

 

虫喰いの少ない薪

 

 

薪の虫喰いは避けることはできません。どんな薪にも虫は住み着きます。

中でも厄介なのはキクイムシカミキリムシなどの薪に卵を産み孵化させ、幼虫が薪の中を這い回るように食べてしまう例です。しかし、食べられたせいで薪の質量が極度に減ったりすることはないので気にしなくて大丈夫です。

しかし、やはり虫喰いの一番の欠点は薪から粉が噴き出ることでしょう。薪を室内に運ぶ際や、薪ストーブに投入する際に粉が舞うと不快な気持ちになってしまいます。私はアレルギー性鼻炎なので、粉が舞うたびに体が拒否反応を示すのです。

 

そこで、できる限りではありますが、虫喰いを減らすために私が行ったことを紹介します。

 

1. 薪作りは冬に行う

切り倒して一年経った原木であれば既に虫が産卵している可能性が高いですが、切り倒してすぐの場合はほぼ虫の影響はありません。その状態でできれば2月下旬までに薪割りを済ませて乾燥させることができれば、虫の産卵時期(梅雨時期〜秋くらい※諸説あり)にはだいぶ乾いているので虫の被害は少なくなると思います。
建材でイメージすればわかりやすいと思います。大工さんなどが使う柱や板は十分な乾燥を経ているため、虫喰いには強いです。梅雨時期には木材も湿気を吸うため、キクイムシにやれれる可能性は0とは言えませんが、ほとんどないと考えてもいいです。
雨に濡れる場所だからと木材に必ず防虫・防腐剤(クレオソートなど)を塗り込む方がいますが、必要以上に塗ることはしなくてもいいと私は考えます。木材は乾燥していれば表面が固く、風通しの良い場所であれば濡れてもすぐに乾きます。さらに、カンナがけをされた木は表面が脂でコーティングされ、天然の防腐剤になるとも言われています(※樹種によって油分の量は異なる)。

 

2. 皮を剥く

全ての薪の皮を剥くのは時間が倍以上かかるので、おすすめはしません。薪作りが嫌になります、、、
剥きやすい樹種だけで十分です。時間に余裕があり、薪を育てることを趣味とする方のみにおすすめします。
それでも私が皮を剥く理由は、幼虫は木と皮の間を這い回り生活しているからです。成虫は産卵の際に皮を砕き、皮の中に卵を産みつけます。それが孵化し、侵食を始めるのです。

※木には芯材と辺材があり、主に辺材が柔らかく腐りやすい。そして侵食されるのも辺材。芯まで食われることはない。

 

杉の樹皮が一番剥きやすいです。さらに、杉は高確率でキクイムシの被害にあうので剥いていて損はないです。剥ける瞬間も気持ちいいので好きな人もいると思います。

 

杉の皮剥き

 

さらに、皮剥きは薪の乾燥も早めます。皮が無ければ風を直接的に受け、雨を蓄えることも少なくなります。

皮剥きの欠点は時間がかかりすぎることと、剥いた皮が山のように邪魔になることです。剥いた皮の有効活用としては、薪棚の屋根や装飾でしょう。乾かしてストーブで焚くという方法もありますが、皮を乾燥させるスペースをさらに確保することと、焚いてもエネルギー効率は悪く、すぐに灰になってしまうので、焚き付けに少し混ぜるくらいが丁度いいです。

 

頑張っても頑張っても、その年の気候や集めた原木の状態によって薪とどう向き合うのかが変わってきますので、ある程度頑張ったら妥協することが一番だと思います。
良質な薪とは言っても条件が人それぞれであり、今焚いている薪と、その薪を作った自分に敬意の念と感謝の気持ちを持って日々生活している私なのです。

 

 

 

HACHI